2010年4月4日日曜日

お母さんあなたはわたしを哀せませんでしたね

お母さんあなたはわたしを愛せませんでしたね
あなたの容れものに定まらない子供でした
食卓を囲む不義を憎みました
汚れた食物に手を着けることができませんでした
男に仕える女の重荷が忌まわしく
不器用な ひとと空腹の前で
わたしはあなたを恨むこともなくわたしはわたしを裁きました

水を飲むように得られるものがわたしにはありません
渇 いて臥す砂の上
終わらない夏
身を隠す岩影が見あたりません
傾いた愛の容(かたち)は抱擁でした
身を焼き尽くしわたしを沙 (すな)に返すことでした
血の煮え滾(たぎ)る悦び
眩しいほど汚れる肉に殉じる哀
放り出す魂の明日
投げ出したい清いいの ち

砂の上青い空
寄せては返す波
目を瞑ると潮の鼓動
果てしない海原につながれて
お母さんあなたにはもう逢 えません
わたしはちぐはぐに海の上を旋回するかもめでした

お母さんわたしはそれでも遠くにあなたを愛しました
愛すること は愛を説くことではありません
愛さないことは愛せないわたしを作ることではありません
愛せないことは愛の軽さばかり口にするわたしを育 てることではありません
お母さんあなたが愛せない理由を持ったために
わたしは愛の意味を求めました

愛だけがひとを救うと あなたは教えました
暗い森を住処とし
分け合う林檎を求めてわたしは地の果てまで歩きました
愛はうつくしい虹の橋でした
愛 は血と血の偽りの誓いでした

今日も
砂の上青いだけの空
寄せては返す波
潮は引き
わたしの手の平に遙かな沙
波に砕かれた骨

引き裂かれたひとの確かな愛が

2:58 2010/04/04 月曜日