2010年3月14日日曜日

未然形の爪

熟れた秋を歩く
慈愛(うつくしみ)を湛(たた)える水の辺(ほとり)
流れに指を浸すと
紫の雲路鳥が啼く

望むことさえ並ばないこのれすとらん

おんなは声を呑む
急(せ)かし為(し)尽くした背の心(うら)さびしさ
蛇足の煩いが引いてゆく色のない岸
再び燃え立ち移ろう野焼きの後始末に
未然形の爪を噛んでは切る

春になったら何をしようかしら

それが口癖
コートの裏地さえ外せないくせに

七曜は瞬く間に過ぎ

春は見限り夏が瓦に赤を張る
骨身に不実の果実酒を注ぎ
冬に海端をさ迷う


2009年1月22日木曜日19時21分